声優道

超ベテラン声優からあなたへ、声優になるための極意を伝授します。


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吉野裕行の声優道

元気な少年役からクールな青年役まで演じ分けるたしかな演技力で活躍中の声優・吉野裕行さん。歌やラジオ、イベントなどのお仕事でも多忙な日々を過ごしていますが、この世界に入る前の吉野さんはどんな青春時代を過ごしていたのでしょうか?

プロフィール

吉野裕行 
よしのひろゆき…2月6日生まれ。シグマ・セブン所属。
1996年に声優デビュー。2000年に『ヴァンドレッド』のヒビキ・トカイ役で初の主人公を演じる。以降、『機動戦士ガンダム00』(アレルヤ・ハプティズム/ハレルヤ)、『ヤッターマン』(ガンちゃん/ヤッターマン1号)、『結界師』(墨村良守)、『SKET DANCE』(藤崎佑助)など数々の人気作品に出演。2013年にはkiramuneレーベルよりアーティストデビューを果たした。

進路を決められない自分が初めて選んだ声優という道

進路を決められない自分が初めて選んだ声優という道

 生まれて初めて声優というものを意識したのは保育園に通っていた頃ですかね。TVアニメのエンドロールを見ていて、漢字は読めないけど、同じ名前を見つけたのがきっかけです。最初に認識したのは、永井一郎さん。『サザエさん』のお父さんと『はいからさんが通る』の紅緒さんのお父さんの声が同じなんだ! と思って見ていました。まあ、僕の記憶も定かではないので、実際はもうちょっと大きくなってからなのかもしれないですけど。
 子供の頃は積極的に何かをするタイプではなくて、学校とかでも特定のグループに入るというよりは、基本的には誰に対しても人当たりがいいように、あまり波風を立てないように過ごしていたと思います。人見知りだし、勉強もできないし、スポーツもできなかったし、競争意欲もまったくなかった。ただ、頑固な部分とかこだわりとかは、子供のときからあったんでしょうね。保育園のとき、親が送り迎えできないと普通お休みになると思うんですが、僕はひとりで勝手に行ったことがあって。補助輪付きの自転車に乗って保育園に行って、先生に「お母さんはどうしたの?」と聞かれて「ひとりで来ました」と答えたら、親が怒られたという(笑)。そういう無茶なところは昔からあったみたいです。

 勉強は本当にダメで、高校に行くのも正直苦労しました。受験するに値しないくらい成績が悪いから、志望校まで面接を受けに行って。その学校を選んだのも、仲のいい友達が受けると言っていたから「じゃあ、俺もそこ受ける」という感じで、自分で決めたわけではないんですよね。単純に学力が低かったので受けられそうなところが少なかったのもあるけど、それにしても物事をぜんぜん決められない子でした。高校を卒業するときも、親の手前、大学受験をしないと悪いなと思っていちおうは受けたんですけど、もちろん不合格。どうしようか?となったときに思いついたのが、声優の専門校に行こうということでした。
 高校時代の友達にアニメ好きが多くて、そいつらが進路の差し迫ってくる頃に専門校の資料を取り寄せていたんです。今でいうCDドラマ、当時はカセットドラマが付いていたから、それが聴きたかったんでしょうね。その資料を「みんな要らないんだったら俺にくれ」と言って、回してもらって。自分もアニメやゲームが好きだったけど、絵を描くほどの才能もシナリオを書くほどの才能もないし、ゲームのプログラムが組めるほど数字ができるわけでもないし、ほかに何かできる仕事はないのかなと。そう思いながら資料を眺めていたら「そうか、声優があったな!」と。昔から自分の声が変わっているということはわかっていたから、なれる可能性がいちばん高いのは声優じゃないかと思いました。。

高校卒業後にやってきたちょっと遅めの反抗期

高校に入る前は自分で進路も決められなかったような僕でしたけど、専門校に入ってからはすごく変わったなと思います。当時の友達がなかなか過激な人が多くて……(笑)。どちらかというと素行が悪いけれども、ただ「自分は声優になれる」という自信だけはあるという友達がいたんですよ。反面教師みたいな部分もありつつも、自信をもつというのは大事なことだと、一緒にいて感じたんですよね。まず、気持ちで負けていたらダメだなということがすごくわかって、自分でもわかるくらいガラッと変わりました。たまに先生たちから呼び出されて「素行が悪いグループと一緒にいちゃダメだ」といわれたこともあって、中学の頃だったら「はい」と素直に従っていたんでしょうけど、そのときにはもう友達の影響を受けていたから「友達は自分で選ぶものだから関係ないでしょ」みたいな感じになっていて。

 専門校に通った1年間で得たのは、自信もつことの大事さとメンタルの作り方を学んだことだったなと思います。そこで気持ちの問題はクリアになって、やる気をもったうえで最後にプロダクションに所属するためのオーディションを受けました。でも、それには受からなかったんです。
 そのときはオーディションに落ちたとはいえ、実力でいえば合格した子たちよりも自分のほうがあると思っていました。それでも落ちるんだったら、もう声優を目指すのはやめようと反発して、その後2年間はバイト生活を送ることになりました。中高を卒業してから、遅い反抗期が来たみたいですけど(笑)。でもその状態でバイトしている間に、専門校を一緒に卒業した子たちはシグマ・セブンに入って、1年目、2年目とステップアップしていって……。それを見ていると「俺の方が実力はあるのに、ああやってみんな上がっていくということは、やっぱり俺、プロになれるんじゃないかな」と思って。まあ、なめていますけどね(笑)。それでも2年間、空白の時間を過ごした分はゼロからやり直すつもりで事務所のオーディションを受けて、シグマ・セブンに入ることになりました。
 今すごく思うのは、センスのあるなしは大事だなということです。僕は全部において「センス」という言葉を使っちゃうんですけど、学校えらびのセンスもそうですし、先生や友達、先輩との付き合い方のセンスとかもそうだし、あとは運を引き寄せるセンスとか、そのための努力のセンスとか、勉強の仕方のセンスですよね。

 僕の場合は、まず専門校で友達に出会って考え方が生まれ変わったのを感じたし、仕事を始めたことによって昔よりも勉強することがとても増えました。たぶん学生のときの自分は、勉強のやり方が本当にわかっていなかったんだと思います。運動も、最初から無理だと決め付けていて、もっと限界まで走ったり腕を振ったりすることもできたはずだけど、その努力をぜんぜんしなかった。でも、大人になってこの業界に入ってからは、できれば限界までやりたいと思うようになりました。
 僕がみんなにいちばん言えることは、まず「自分で選択」してくれということです。人に言われたとおりにやって、成功したときは、そりゃうれしいでしょう。でも、同じようにやって失敗したときは、その人のことを恨んでしまうかもしれない。そんなのより、自分で選択して成功したほうがもっとうれしいし、自分で選択して失敗Unknownしたときは自分のことをバカだなって思える。ちゃんと自覚できるから、そのほうが絶対いいよって。仕事の波というのは必ずあります。いいときもあれば悪いときもある。そのときに何を選ぶかというのは、それはお前のセンスだよ、と。

 僕が今ここにいるのも、いくつもの細かい選択の結果であって、ゲームみたいなものですよね。雨が降る日に傘を持っていくか、いかないか。あるいは目の前にある水を飲むか飲まないかとか、自然にやっていると思っていることでも全部自分で選択しているんです。それがわかっていれば、何も怖いことはないだろうなと思います。もしも失敗したのなら、そこからどうするのかまた考えればいいし、成功したいのだったら、一つひとつの選択をするときにつねにビジョンをもって、自分が今どこにいるのか、どんな選択をしているのかわかっていたほうがいいと思います。

先輩から学ぼう!

声優相談室、柴田がカツ
最強声優データベース、声優名鑑

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